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第三十八話 一週間あげる

Auteur: 海野雫
last update Date de publication: 2026-08-08 19:07:52
 澪の頭の中に、仁のスマホにあの『神宮寺麗奈』と表示された画面が浮かんでは消える。すっと画面を伏せたのは、澪に対して後ろめたいことがあるからだろうか。

 あのふたりはとてもお似合いだった。対等に仕事をしていたし、美しい麗奈は眉目秀麗な仁の隣に並んだとしても引けを取らない。

 それに比べて、澪はどうだ。仕事には誇りを持って取り組んでいる。手作りコスメの知識があるから、グロウセオリーで販売しているコスメの成分だって読むことができる。

 けれど――。

 美人でも、スタイルがいいわけでもない。仁の横に立てば、みすぼらしく見えるに決まっている。

 花音たちの結婚式のとき、周りの人はたしかに褒めてくれた。けれどあれは「高宮社長のパートナー」に向けられた言葉だ。澪個人を見て言われたわけじゃない。あの日きれいに見えたのだって、仁が選んでくれたドレスのおかげ。

「はあ……」

 大きなため息が出た。

 顔を上げると、オフィスの天井から冷たい光が降り注いでいた。周りからは、キーボードを叩くカタカタという音が聞こえる。

 澪は眉間を揉み、モニターに顔を向けた。ちょうど奈央がこちらへ歩いてくるところが目に入った
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     仁の言葉の後、三人の間にしんと沈黙が訪れた。喧騒が遠のいていく。 有村は口角を上げて、ニヤリと笑った。「へえ……。そんな感じですか」 澪が有村に目を向けると、有村は笑ったまま、視線だけを仁に向けていた。 なんだ、この一触即発状態は……。仁は、今にも噛みつきそうな顔だ。「と、とりあえず、もう遅いですし、帰りましょう? ここにいては迷惑になりますし」 澪はふたりに向かって声をかけた。駅前で見目のよい男同士がにらみ合っているからか、遠巻きに女性が集まってきた。「あれって、なんていう会社だったっけ? 社長だよね」なんて声も耳に届いた。 そうだった。仁はビジネス誌だけでなく、ファッション誌にも顔出ししている。目鼻立ちの整った顔立ちなのだから、世の女性が放っておくはずがない。「あの背の高い人、モデルかな? めっちゃかっこいいんだけど」 一方の有村も負けていない。すらっと背が高い。切れ長の目は冷たそうに見えるが、ほかの顔のパーツとの相性なのか、やけにやさしく見える。 とにかく、このふたりは黙っていても、人目を引くのだ。「ああ、そうだな。澪の言うとおりだ。送っていくよ。澪、行こうか」 仁がすっと手を澪の腰に回した。まるで恋人のように。「じ、……高宮社長?」 澪は逃れようとしたが、ガッチリと回された腕は、澪の力では剥がすことができなかった。 仁が歩き出そうとしたとき、澪は有村に腕を掴まれた。「……え?」「僕が朝倉さんを誘ったので、僕が送って帰ります」 その言葉に仁は目を細めた。まるで氷のビームでも出てくるのではないかと思うほど、まとう空気が冷たい。「ご配慮、感謝します。俺、車で来てるんで、俺が送ります」 そう言うと、仁はさらに澪の腰を自分へと引き寄せた。 ――ちょっと、一体どうなってるの? 気づけば、澪は

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